2011年9月15日『これからの「プリビズ」の話をしよう』と題して、株式会社IMAGICA 山口 聡氏によるセミナーが行われた。
山口 聡氏
●デジタル・プロダクションにおけるPreViz(プリビズ)とは?
最近では映画やCMのほぼ全ての作品においてデジタル映像を活用しており、デジタルデータを一元管理し効率的に制作(デジタル・プロダクション)している。その際に様々なスタッフが関わる中で、情報伝達の必要性が高まっていると、氏は説明した。
そこで、本格的な制作前に「あらかじめ」どういう映像をつくるか「目に見えるように」する作業であるプリビズ(PreViz)を用いて、情報伝達をしていこうというのが世界の流れになってきていると説明した。
デジタル・プロダクション
●プリビズ(Pre Visualization)
あらかじめどういう映像を作るか目に見えるようにしておくこと、と説明。
(ここで、実際に使用されたプリビズ上映。)
以下の4つの機能を目的としていると氏は語った。
・企画の明確化
・作業内容の明確化
・デジタルプロダクションにおける様々なスタッフとの情報共有
・適切な予算配分とコスト管理
そして、プリビズの映像をベースにし、各部門が作業を進めていく際に限られた予算と期間の中で如何にしてより良い映像を作り出すのかについて制作設計を立てることが可能となると述べた。
PreViz(プリビズ)とは?
ハリウッドではR&Dにて必要な開発が明確になり、全体のプランニングが可能になっており、あらゆる場面で使われているとのこと。
●次に、制作工程におけるプリビズの役割について説明された。
まず、立案・企画として、クライアント説明や、どうやって制作を進めていくかなど、映像制作に必要な様々な計画を立て、その後、計画に沿って撮影を行うのが制作工程である。
監督の意向に沿って、映像の元となる素材をつくっていくが、実写であればフィルムやビデオなどで撮影し、アニメーションであれば作画し、CGであればモデリング、レンダリングして映像素材をつくっていく。その後、素材を内容に沿って並べ、つなぎ合わせ編集を行う。必要であれば、合成などの特殊効果作業も行なう。
上記の映像制作の工程の中で、プリビズは「あらかじめ、どういう映像を作るか目に見えるようにしておく」ので、企画の段階で内容が決まってから撮影に入るまで必要であるとのこと。企画で決まった内容を、画像や映像を使って目に見えるようにし、その後の全ての制作工程を円滑に行なえるようにすることがプリビズの持つ本来の役目なのであると力説した。現在のハリウッドでは、プリビズをベースに映像制作は設計されている。
制作工程とプリビズ
【プリビズツール】
特殊な製品を使うのではなく、Autodeskの3Dソフト、MotionBuilder、Mayaなど一般的に使用されているCGソフトを使用しているとのこと。これは、各部門へのデータ受け渡しの必要性が高いので、一般的なCGソフトウェアを使っているとのことだ。
【目的】
プリビズにおいては、目的に応じた対応が最も重要であり、目的を明確化する必要があるとのこと。
【プリビズの進化】
始まりはSTAR WARS Return of Jedi(1981)であり、人形を乗せたバイクのミニチュアを手動で森の中を走り周るのを、小型カメラで撮影するという特撮であった。制作を始める前に完成形を確認できる映像にしたという点で世界最初のプリビズである。
(ここで、実際の作品とプリビズ映像を上映。)
カメラアングルを検討するなどの用途から、プリビズの歴史が始まった。
その経験を踏まえて、STAR WARS Episode Ⅰ制作時にプリビズ会社が設立され、現在のハリウッドで活躍しているプリビズ会社(10社程度)の基となった。
現状では、監督の大きな信頼がプリビズ制作者によせられており、監督からの手書きのメモをもとに、アニメーション演出面にもかなりの意見が採用されている。
●日本におけるプリビズ
次に、ハリウッドに比して、時間も予算も余裕がない日本においてこそプリビズが必要であると氏は語った。
ローコストでスピードが早く効率よく制作できるので、日本こそプリビズが絶対に必要であると示唆した後に、氏が実際に使用しているプリビズシステムについて説明を行った。
① ≪写真左のシステム≫ ノートパソコン+ゲームコントローラ
監督がゲームコントローラで簡単に、カメラアングルを変えることができるシステム。
② ≪写真中央のシステム≫ バーチャルカメラシステム
センサーが搭載されており、カメラを動かすことで、カメラマンや監督が感覚的にプリビズを作成することが可能である。カメラの形をしているが、実際はカメラの機能はない。
超音波システムを使っており、壁に超音波発信機をつけておくだけなので、セッティング時間がかからないという利点がある。CGに使用できる範囲がせまいという弱点はあるが、簡易的で使いやすい。
【オンセットプリビズ】
このシステムを応用してブルーバックで撮影する際に、プリビズ映像を背景に入れて撮影することで、アングルチェックができ後処理が格段に減る。
【3Dプリビズ】
視差のレベルを決めるのに現在は時間がかかるのだが、スクリーン面とカメラ間の距離で感覚的に視差をつけて、事前にチェックでき現場作業の効率があがる。
③ ≪写真右のシステム≫
モーションキャプチャーのシステムを使ったバーチャルカメラシステムである。利点は、広い範囲でスタジオやロケにいる感覚でプリビズ可能である。だが、モーションキャプチャは高額になる。
●最後に、これからのプリビズについて
・全体像と目的を把握
・情報共有をする
・力を入れるポイントを決めて効率よく撮影
目的を持つことで、制作のスピードアップと無駄な予算を抑えることが可能となるプリビズを鍵にして、予算面で我慢している点が多々ある日本の制作現場の問題を解決して、日本にある有用なコンテンツを日本で制作していきたいと熱く語って講演を締め括った。
取材・執筆:角田 福美(つのだ ふくみ)
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